2009/02/26

たっぷり見せる

23日、歌舞伎さよなら公演・二月大歌舞伎を2つ観た。

2009年1月から16ヵ月かけて、歌舞伎座が取り壊されるまでの間に観客が選んだ「好きな歌舞伎20選」を上演していくらしい。11月にはがきで投票した結果はこちら。

1.勧進帳
2.義経千本桜
3.京鹿子娘道成寺
4.仮名手本忠臣蔵
5.白浪五人男
6.助六
7.桜姫東文章
8.源氏物語
9.連獅子
10.恋飛脚大和往来
11.菅原伝授手習鑑
12.三人吉三
13.阿古屋
14.俊寛
15.伽羅先代萩
16.暫
17.女殺油地獄
18.里見八犬伝
19.曽根崎心中
20.元禄忠臣蔵

『倭仮名在原系図 蘭平物狂(らんぺいものぐるい)』は、一般の投票によるものではないらしいが、後半の大立廻りが派手なので、観客は大喜び。

三津五郎と若者たちのアクロバティックな攻防がひたすら続く。
器用にはしごを使って上ったり下りたり、ふりまわしたり。
無敵の蘭平に「やられた!」といわんばかりの若者たちのお決まりのポーズが可愛らしい。

すべて型が決まっているということには、緊迫感がない代わりに、笑いがある。若い衆の身体能力は素晴らしいけれども、それは微笑ましく、好もしいという印象を与えるものである。

一生主役は演じられないだろうに、とんぼ返りのためだけに歌舞伎に関わっているのだろうか・・・
という疑問も起こる。


でも、後半の幕が開いた瞬間、三津五郎を取り囲んだ梯子の陣はスペクタクルとして美しかったです。


『歌舞伎十八番の内 勧進帳』

能の演目にある『安宅』と同じ主題。都落ちの義経一行が山伏と強力に身をやつし、安宅の関を突破しようとする場面。富樫左衛門に見咎められた義経をかばうため、弁慶が知恵をふるう。

山伏に扮した4人の家臣、強力姿の義経は、状況設定の役割であり、客席に背を向ける時間が長い。

吉右衛門の弁慶と菊五郎の富樫が互いを探り合う場面に緊張感がある。

役者の貫禄である。

前の席に座っていたオジサンは、相当のファンらしく、屋号を叫ぶのに余念がない。幕も閉まり、弁慶が花道で最後の大見得を切る。彼の放った掛声に、会場に苦笑のざわめきが起こる。

「タップリ!!」

そう、今日はたっぷり、たのしんだ。

心から楽しんでいる観客のそばで見る劇は、ほんとうに愉しい。