2009/02/24

宇宙ステーション

21日、ふらりと入った世田谷美術館で、難波田史男展がやっていた。

世田谷区は難波田史男の出生の地であるため、ここに700点以上も収蔵しているらしい。
抽象画家の父・難波田龍起(たつおき)の二男。1941-1974年。
クレーやミロ、カンディンスキーを彷彿とさせる、色彩豊かな水彩画が多い。

初期の作品は、頼りなげな線画に、水分たっぷりといった感のうすくぼやけた色が塗られている。
『自己とのたたかいの日々』シリーズ、『夢の国』、『凧を上げる子供たち』など、なにやら精神分析にかけやすそうな様相を呈している。
線は境界であることをやめてしまっている。
うすめた朱肉がひろがった上に滲んだ黒色は、こころの内部に浮かぶ細かな「しみ」に見える。

内的世界の均衡がむやみに壊されたような初期作品に比べ、『モグラの道』(1963)あたりから外から影響を受け付けない独自の世界が出来上がった感がある。
11点1組の壁一面のエメラルドグリーン。
草花のような宇宙人のような動物のような、とぼけた表情の生き物が生活するめくるめく夢の世界は、無限に、力強く広がっている。

「世界は僕から逃げてゆく」

カフカやアポリネールに衝撃を受けたという、史男の言葉である。

70年代に入って線が消え、べったりした透明感のない油絵は、閉塞感か、新技法の模索か。
10年間で、みるみるうちに変わっていった様子がうかがわれる展示だった。

2005年に龍起+史男展を開いたオペラシティ・アートギャラリーは、難波田父子の作品を多く収蔵しているらしい。
まあ、ついこないだのこと、当分展覧会はないだろうな。


・・・と思ったら、まさに今、オペラシティでやっていた。。。
http://www.operacity.jp/ag/exh103.php