2009/01/10

回想 - ピーター・ブルックによる『ロッカバイ』

ベケット生誕100年祭、Beckett 2006開催中のパリで観たブルック演出のベケット劇。
『ロッカバイ』、『芝居 下書きI』、『言葉なき行為 II』の三本立て。
場所はお馴染み、Bouffes du Nord劇場。

束縛された身体の不自由と、それでもなお生きることをやめない生身の身体の間を行き来する三作品。
『ロッカバイ』におけるブルックの演出には、こうした特徴を非常にうまく利用したと思われる工夫があった。
揺り椅子の上に磔になったような老女が、揺られながら自分の声を聞いている、という短い劇だが、ブルックは、普通の椅子を用い、なんと俳優みずからが椅子を揺らした。
椅子が倒れないぎりぎりの角度で、足を使ってバランスをとるのだ。
何か仕掛けがあるのかと思ったが、ブルックのこと、そんなケチな真似はしないだろう。
長い時間ではないが、これは相当疲れるし、うっかり倒れたら全ておじゃんである。

落ち着いたGeneviève Mnichの語りの声と、極限状態にある身体という対比が美しい。
不可能と可能の間で揺れるベケット的身体の見事な表出であったと思う。