2009/01/15

Rouault×Pollock

マドレーヌ寺院そばのPinacothèque de Parisで開催されている、2つの展覧会に行ってきた。
生々しい力強さに飢えているいま、なかなか嬉しい取り合わせだ。

まず一つ目は、Jackson Pollock et le chamanisme。

ポロックは、ユング派の精神分析医に診断を受け、絵を描きなさいと言われたらしい。
ユング自身による、1935年ロンドンのクリニック・タヴィストックでの講演にそんな話があった。
”揺れ”を感じたら、心に浮かんだことをそのまま書きとめておきなさいと、ある患者に助言したという。

数種の絵の具が流れ落ち、飛び散ったようなdrippingsという手法の絵には見覚えがあった。
以前ポンピドゥで見かけたときには、確かにどこかに受け入れがたい感触があったが、鷲に扮したシャーマンの踊りを暗闇で呆然と眺めたあとに出会うと、何かしらシンパシーのようなものが感じられる。
羽ばたく翼、反復横跳びの一定のリズム。
バッサバッサ。たっくたっく。
意識が分散していくのを感じる。

自動筆記ならぬ自動素描は、アントナン・アルトーの絵を彷彿とさせる。
どぎつい配色で集団的エクスタシーを描いた絵は、「残酷」の精神に通じているようだ。
そこかしこに配置されたアンドレ・マッソンの、色彩とタッチの繊細さが好対照をなしていた。

二つ目。Georges Rouault。

力強い線が印象的だが、とりわけポートレートは魅力的だった。
べったりと太く黒い線で囲まれた目に、なんともいえない表情が浮かぶ。
キリストの受難のシリーズには、愛らしささえある。
壁にかけておきたいくらいだ。
無骨であたたかい。

あんなに酸素が薄い空間でなきゃ、あと1時間見れたのに。
ふらふらと群衆を15分で駆け抜けたことが悔やまれる。